P03: 不快への滞留
Lingering toward Discomfort
不快にとどまり「空白」として処理されない状態
Context
- P02: 識別された感情 を経て、まだ何かがひっかかっている。
- まだ言葉・判断・行為に移れないが、しかしまだ逃げてもいない。
- 会議の場などで、その状態が沈黙として現れることがある。
Forces
Pressure (圧力)
ファシリテーターや参加者を、内側から「行為(Doing)」へと突き動かす不可視の重力。
- 進行への引力: 沈黙が続くほど、場の時間が停止しているように感じられ、一刻も早く「何かを動かさなければ」と身体を急き立てる引力。
- 役割への引力: 「何もしていない」状態に耐えられず、何かしらの言葉を発して「ファシリテーター(または参加者)としての役割」を再確認しようとする引力。
Fear (恐れ)
沈黙の中で、役割や意味が剥がれ落ちていくことに対する根源的な震え。
- 空虚への恐れ: 沈黙を「何も起きていない空白」と誤認し、その空虚さに自分や関係性が飲み込まれてしまうことへの恐怖。
- 融解への恐れ: 役割(進行役、発言者)を手放し、ただそこに「存在しているだけ」の状態になることで、自分という輪郭が溶けてしまう感覚に対する恐怖。
Armor (防衛)
不快感から逃れるために行われる、無意識の介入行動。
- 代理言語化: 「つまり、こういうことですか?」と、相手が言葉を探している最中に先回りして言語化し、沈黙を埋める。
- 難易度調整: 「難しい質問でしたね」「例えば…」と、答えやすい浅い問いを投げ直し、思考の深さをリセットする。
- 自己投入: 自分の経験談や意見を語り始めることで、場の焦点を「参加者の内面」から「ファシリテーターの話題」へとそらす。
Problem
沈黙のような不快が訪れた瞬間に介入することで、当事者が内側で起きているプロセスが自然に展開する余地を奪ってしまう。
最も重要な「内省のプロセス」が、不安の回避行動によって中断される。
Essence
不快を処理しない。意味づけしない。突破しない。
不快が「対象」になる前の位置で、主体と不快の関係が切れないまま、動きが止まっている状態。
沈黙は、その状態が場に現れた一つの表れにすぎない。
Resulting Context
- 借り物ではない、重みのある言葉(Primary Words)が紡がれる
- 参加者全員が、発話者だけでなく「場そのもの」に耳を澄ませるようになる
- P04: 引受の成立 へと接続される土壌が整う
Breakdown (Anti-Pattern)
- 助け舟: 誰かが苦しそうに見えた瞬間、助け舟を出してしまう
- ラベリング: 「難しいですよね」と沈黙をネガティブに意味づけしてしまう
Facilitator Self-Check
私の呼吸は浅くなっていないか? 今、この沈黙を「解決」しようとしていないか?
Minimal Actions
沈黙を壊さず、State を保つために許されている最小動作。 これ以上は介入になり、これ以下は逃避になる。
1. 呼吸に留まる (Stay with Breath)
- 自分の呼吸だけを感じる。
- 言葉を探さない。問いを作らない。
2. 視線を固定しない (Soften the Gaze)
- 特定の誰かを見つめない。
- 場全体、もしくは一点(テーブル・床)を見る。
3. 沈黙を「切らない」 (Do Not Cut)
- 5秒、10秒、20秒というカウントをしない。
- 「十分待った」という判断をしない。
「何かをしよう」と気づいたら、それをしない。 これは我慢ではなく、状態を壊さないための判断である。
Rule: 沈黙が破られる「正しいタイミング」は存在しない。 破られたときが、そのタイミングである。
Signals
- ファシリテーターの視線が柔らかく、一点に定まっている
- 参加者の視線が宙を漂うか、内側に向いている(誰も他者の顔色を窺っていない)
- 沈黙が破られた後、すぐに反応(相槌や同意)が起きず、再び静寂が戻る