HAS 調律位置マップ
HAS Attunement Map ― 状態の位置を知るための地図 ―
この文書の位置づけ
この文書は、HASを学ぶための段階表ではない。
また、実践の巧拙を評価する基準でもない。
これは、
いま自分がどこにいるかを誤解しないための地図である。
HASにおいて、この地図が扱うのは、
- 進行
- 成果
- 技巧
ではなく、選択の余地が失われたときに、位置を取り違えないことである。
この地図は、そのために置かれている。
基本原則
この地図が示すもの
この地図は、状態(位置)のみを示す。
状態間の移動や戻り方(遷移)は、
Patterns に委ねられている。
これは、位置を知ることと、動くことを分離するためである。

[HAS外]
└─(気づく)──────────────────────────▶ 観察
観察
├─(判断を保留する)──────────────────▶ 判断保留
├─(衝動・不安が増幅)────────────────▶ 乱れ
└─(結論/完遂/介入固定)────────────▶ [HAS外]
判断保留
├─(試しに動く)────────────────────▶ 仮動
├─(戻ると判断)────────────────────▶ 観察
├─(耐えられなくなる)──────────────▶ 乱れ
└─(結論/完遂/介入固定)────────────▶ [HAS外]
仮動
├─(試行を終える)──────────────────▶ 観察
├─(途中で止める)──────────────────▶ 判断保留
├─(制御不能)────────────────────▶ 乱れ
└─(完遂目的化/操作化)────────────▶ [HAS外]
乱れ
├─(戻れると判断)──────────────────▶ 観察
├─(一段階戻る)──────────────────▶ 判断保留
└─(操作・結論化)────────────────▶ [HAS外]
地図の読み方
- ここに示されるのは「段階」ではなく位置である
- 上下・優劣・到達順序は存在しない
- どの位置からでも、観察に戻れる
ここでいう「戻る」は、優劣や進捗を示すものではない。
位置を再同定する判断が行われた時点で、HASの前提条件は満たされている。
HASが成立する前提条件
位置はすべて以下の前提の上に成り立つ:
- 結論を確定していない(判断を閉じていない)
- 完遂を目的化していない
- 介入を「やるべきこと」として固定していない(操作モードになっていない)
これらの前提が満たされていない場合、その状態は HAS の外にある。
HAS外の兆候(重要)
以下のいずれかが起きている場合、現在の状態は HAS外にある。
- 結果を良くしようとして介入している
- 意味づけ・評価・結論を下している
- 完遂・成功・変化を目標に動いている
- 「正しくやれているか」を気にしている
- 「この方法でいく」と手段を固定している(切り替え不能になっている)
HAS外にいる場合の対応
この場合、状態を特定しようとする前に、観察という位置が立ち上がることがある。
観察が立ち上がっている場合、その時点で状態は HAS内にある。
4つの位置(States)
観察(Observation)
観察は、HAS内で参照されうる位置の一つである。
初心者も、経験者も区別されない。
ここは、準備や前段階として位置づけられるものではない。
内部定義
刺激に対して生じつつある身体反応を、意味づけや感情名を与えずに認知している状態。
判断はまだ立ち上がっていない。
この位置にいる兆候(例)
以下は、この位置にあるときに見られることのある身体的・内的な例である。
すべてが当てはまる必要はなく、確認や評価のための項目ではない。
- 身体の緊張や違和感がある
- 衝動が立ち上がりつつある感じがある
- 判断や結論が、まだはっきりしていない
- 呼吸や身体反応が過度に抑え込まれていない
観察における Patterns との関係
観察にいるとき、P01–P04 はいずれも実行されない。
それで HAS は成立している。
注意
※HAS外条件: 結論/完遂/介入固定が立ち上がった場合、その状態は HAS外にある。
- 何もしないことは放棄ではない
- 介入しない判断は、責任の放棄ではない
- 観察に留まっていること自体も、HAS内における選択肢の一つである。
判断保留(Suspended Judgment)
この位置は、結果の改善を目的としない。
判断が確定されていない状態が維持されている位置である。
内部定義
観察の結果、起きていることや感じていることを、解釈前の“事実”として扱って受け取っているが、その意味付けや解釈、次の行為に関する判断は宙吊りにされている状態。
選択の余地を奪わないため介入の制限が起きている。
哲学的には、エポケー(判断中止)に相当する状態。
この位置にいる兆候(例)
以下は、この位置にあるときに見られることのある例である。
すべてが当てはまる必要はなく、確認や評価のための項目ではない。
- 介入したい衝動が生じている
- 状態が整っていないまま、結論が確定していない
- 進行や完遂が前景化していない
- 停滞や沈黙が、ただちに問題化されていない
判断保留における Patterns との関係
判断保留では、P01 が自然に立ち上がることがあるが、
それ以上進まなくてもよい。
注意
※HAS外条件: 結論/完遂/介入固定が立ち上がった場合、その状態は HAS外にある。
- 結果(良くなった/悪くなった)によって位置は判定されない
- 自己評価や熟達度の判断には用いない
- 事後評価を前提としない
仮動(けどう / Tentative Action)
仮動とは、「一巡を完遂すること」ではない。
進まないという判断を含んだ試行である。
内部定義
仮動(けどう): 仮に動いてみること。本実行や完遂を目的としない試行的な行為状態。
P01から入り、試行的に動いているが、完遂を目指していない状態。
成果への期待も、評価の対象化もされていない。
この位置にいる兆候(例)
以下は、この位置にあるときに見られることのある例である。
すべてが当てはまる必要はなく、確認や評価のための項目ではない。
- P01 から入り、試行が途中で終わっている
- 状態の変化が、ただちに失敗として扱われていない
- 試行が完遂や結論に結びついていない
- 成果や進捗が前面に出ていない
仮動における Pattern との関係
仮動は、P01 から入り、途中で止まることを含む。
P04 に至らなくても失敗ではない。
仮動からの遷移(重要)
試行が終わり、再び観察が立ち上がる。
これは、失敗や乱れを意味するものではない。
注意
※HAS外条件: 結論/完遂/介入固定が立ち上がった場合、その状態はHAS外にある。
- Pattern を道具として切り出さない
- 「P03 だけを使う」という発想を持たない
- 一部だけを「やろう」とした瞬間、断片化が始まる
乱れ(みだれ / Disruption)
HAS は、失敗しない体系ではない。
戻れる体系である。
乱れは、「失敗」ではなく、位置である。
内部定義
主体または場の関係が乱れており、継続が難しい状態。
乱れは、必ず通過すべき関門ではない。
破綻時・失敗時に現れる非常口である。
この位置にいる兆候(Signs)
- 自分または場の関係が乱れている
- 焦りが強い
- 介入衝動が抑えられない
- 沈黙に耐えられない
- 継続が難しいと感じている
乱れからの戻り
その時点で、乱れは記述可能な位置として扱われる。
注意
※HAS外条件: 結論/完遂/介入固定が立ち上がった場合、その状態はHAS外にある。
遷移の詳細
遷移の方法は、以下を参照:
自己確認の問い
1. まず、HASの中にいるか確認する
以下のいずれかに該当する場合、HAS外にいる:
- 結果を良くしようとしている
- 評価・結論を下している
- 完遂を目指している
- 「正しくやれているか」を気にしている
- 手段を固定している(切り替え不能になっている)
→観察が参照される
2. HASの中にいる場合、位置を確認する
いま、私はどこにいるか?
重要な注意
- この問いは、評価のためではない
- 位置を知ることで、次の判断が可能になる
- どの位置にいても、観察に戻れる
この地図の限界
この地図が示さないもの
- 遷移の方法(どう動くか)
- Patterns の使い方(何をするか)
- 成果の評価(うまくいったか)
これらは、他の文書が担当する。
この地図が示すもの
- 位置の識別(どこにいるか)
- 遷移の可否(HAS外条件に該当していないか)
- 許可の範囲(やらなくていいこと)
この地図は、動かすための設計書ではない。
迷子にならないための地図である。
関連文書
遷移と循環について
- 全体設計図 — HAS全体の構造
- Patterns P01–P04 — 状態遷移の構造
位置の詳細について
- 判断参照原則 - 優先する判断の基準
- ファシリテーター役にありがちな状態例 - よくある状態
緊急時の対応
- 緊急停止プロトコル — 緊急停止の手続き
この地図は、進むためのものではない。
選択の余地を狭めずに、居続けるためのものである。
Document Control
- Repo Version: v2.6.00-5-gc2fae36d-dirty
- Last Modified: 2026-01-23
- Commit: 973078e
- Author: Takeshi Kakeda