P01: 置かれた感情
Placed Emotion
感情を花瓶のように置かれている状態
Context
- 会話は進んでいるが、場に緊張や硬さがある
- 建設的・前向きな発言だけが流通している
- 違和感や不満が「言わない方がいいもの」になっている
- 感情が議題の外に追い出されている
Forces
Pressure (圧力)
感情という「非効率なノイズ」を、場から排除しようとする不可視の力学。
- 効率性への圧力: 「生産的でなければならない」「早く整えたい」という無言の焦燥感。
- 同調への圧力: 「前向きであるべきだ」という空気感による無意識の強制。
Fear (恐れ)
個人的な感情を場に出すことが、平穏な進行を妨げる「異物」となることへの恐怖。
- 場の崩壊への恐れ: 感情を出すことで、今の平穏な(しかし硬直した)空気が壊れることへの恐怖。
- 異物になる恐れ: 自分の弱さを見せることで、進行を妨げる「異物」として扱われることへの恐怖。
Armor (防衛)
生の感情を「処理可能な情報」へと変換し、無害化しようとする無意識の防衛。
- 知性化: 冷静さ・合理性という鎧で、感情の揺らぎを覆い隠す。
- 一般化: 冗談や一般論に逃げ込み、個人的な痛点に触れさせない。
- 課題化: 「結局どうしたい?」と問いかけ、感情を即座に論理的課題へと変換し、無害化する。
Problem
感情が「処理すべきノイズ」として扱われ、 場は静かだが、内側の緊張は残り続ける。 ここでは「わかろうとする(共感)」こと自体が、関与の圧になる。
Essence
感情を「解決すべき課題」としてではなく、 「テーブルの上の花瓶」のように扱う。
ただ、そこに在ることを認める(置く)。 しかし、その花を生け直したり、分析したりはしない(通過させる)。
- 名前をつけなくていい(ラベリングしない)
- 要約しなくていい(まとめない)
- 意味づけなくていい(解釈しない)
「あぁ、今ここに赤い花(怒り)があるな」と眺めるだけにする。 手にとっていじくり回さないこと。
冷たく見えるかもしれないが、 触らないことこそが、個人の領域を侵さない最大の敬意である。
Resulting Context
- 感情が「私」という人格から切り離され(Defusion)、客観的な現象としてテーブルに置かれる
- 「いじられない(評価・介入されない)」という安心感から、知性化の防衛(Armor)が緩む
- 置かれた感情は、誰にも操作されず、やがて自然に流れていく
整わない限り、次の調律には進まない。
Breakdown
- 「前向きさ」が同調圧力(Pressure)となる
- 「つまり〇〇ってこと?」とファシリテーターが解釈・要約を始め、Armorを強化してしまう
- 感情を表明すること自体が、新たな「ねばならない(Must)」という義務になる
Facilitator Self-Check
今、テーブルに置かれた花(感情)を、勝手に生け直そうとしていないか? その「整えてあげたい善意」が、ここでは最大のノイズになる。
Minimal Actions
State を保つために許されている、最小限の動作。 これ以上は介入になり、これ以下は放置になる。
1. 宣言する (Declare)
- 「解決しなくていい」「一言だけ置く」というルールを告げる。
- Script: 「今の天気を一言だけ置いてください。それに対して誰もコメントしません。」
2. そのまま返す (Echo)
- 相手の言葉を変えずに、点(。)で止めて返す。
- OK: 「イライラしているんですね。(沈黙)」
- NG: 「進まなくてイライラしているんですね(解釈)」
3. 眺める (Watch)
- 出てきた感情(言葉や付箋)を、数秒間ただ無言で眺める時間を取る。
- すぐに「次は?」と進めない。
Rule: Minimal Actions は、少ないほどよい。迷ったら「何もしない」を選ぶ。
Signals
- 沈黙中も呼吸が乱れない
- 割り込みが起きない
- 発話が短く、要点を突く(物語化しない)
Document Control
- Pattern ID: P01
- Version: 1.7.0
- Date: 2025-12-13