P02: 識別された感情
Differentiated Emotion
評価せず、決めず、区別されている状態
Context
P01: 置かれた感情により
- 感情は落ち着いている
- 次に何をするかを急ぎ始めている
- 正しさ・合理性の議論が強まり始めている
Forces
Pressure (圧力)
場の空気を支配している不可視の力学。評価ではなく、現象として記述される。
- 正解への圧力: 「最適解以外は排除される」「論理的な隙は攻撃対象となる」という、場にかかる強い淘汰圧。
- 合意への圧力: 「異論はノイズである」「早く一枚岩にならなければ進めない」という、同調への強力な引力。
Fear (恐れ)
個人の内側で起きている、選択に対する根源的な震え。
- 孤立への恐れ: 自分の言葉で語り、自分で選ぶことは、集団から浮き上がり「一人」になることへの恐怖。
- 否定への恐れ: 自分の提案が否定されることが、自分自身の存在や関係性そのものが拒絶される予兆として感じられる恐怖。
- 不可逆への恐れ: 決定することによって他の可能性が死に、その結果責任を一人で引き受けることへの恐怖。
Armor (防衛)
恐れを感じないために身につける、観測可能な振る舞い。
- 主語の隠蔽: 「私たちは」「普通は」と大きな主語や一般論で語り、自分の輪郭を消すことで責任の所在を曖昧にする。
- 分析と評価: 他者の発言の背景を分析したり、是非を裁定したりすることで、自分が安全な「観察者」の立場に逃げ込む。
- 即時構造化: 曖昧な願いや揺らぎを、即座に「目標・KPI・アクションプラン」という硬い構造に変換する。これは、情緒的な不確実性に耐えられないため、選択を先送りせずに固定化しようとする防衛である。
Problem
恐れから出た声が「願いのふり」をし、 本当に大切な Want が見えなくなる。
Essence
決めない。評価しない。 ただ 区別する。
これは恐れか?それとも願いか?
判断基準は論理ではなく、その場に現れる身体反応。 恐れは「速く・硬く」、願いは「遅く・柔らかい」。
その違いを、暴かず、指摘せず、ただ自分の中で見分ける。
Resulting Context
- 表層的な合意が減る
- 自己正当化が静まる
- 本当に大切な Want だけが残る
Want が出てこなくても失敗ではない。
Breakdown
- 「それは本当の Want?」と詰問(尋問)が始まる
- Want が正解扱いされる
- 願いが即座に計画に変換される
Facilitator Self-Check
今、「本音ハンター(真実の尋問官)」になっていないか? 恐れ(Fear)を指摘して論破しようとしたり、願い(Want)を無理やり引き出そうとしていないか?
※ Want と Desire の区別について:
Want は「満たさなくても成立する志向」であり、Desire は「不快や欠乏を解消したい欲求」である。
本パタン で扱う Want は前者のみを指す。 Desire を Want と誤認すると、介入や誘導が始まりやすい。
Minimal Actions
State を保つために許されている、最小限の動作。 これ以上は介入になり、これ以下は放置になる。
1. 問いを体に置く (Ask the Body)
- 内容(Logic)ではなく、身体反応(Somatic)について問う。
- Script: 「それを言った時、体は重いですか? 軽いですか?」「呼吸は楽ですか?」
2. 内的に区別する (Internal Distinguish)
- ファシリテーター自身の中で「今のはFear(早口・防衛)だな」「今のはWant(遅い・探索)だな」と区別する。
- Rule: それを相手に告げる必要はない。「それはFearですね」という指摘は、新たなFearを生む。
- 参加者同士による同様の指摘も、同じく止める。
3. 待つ (Wait for the Shift)
- Want特有の「遅い声」「沈黙」「言い淀み」が出るまで、口を挟まずに待つ。
- 整った言葉(Fear/Armor)には反応せず、崩れた言葉(Want)を拾う。
Signals
- Want が語られると声が遅くなる
- 一時的な沈黙が増える
- 断定語が減る
Document Control
- Pattern ID: P02
- Version: 1.2.0
- Date: 2025-12-12